情報処理・通信・計測の技術革新に向けて、レーザ光のフォトンとしての特質を活用する未来技術として量子暗号や量子計算などの理論的研究が活発化していますが、デバイス化の研究はまだ殆ど着手されていません。本テーマでは、非線形光学デバイスとモノリシック光集積回路の研究蓄積を基礎として、量子光学的機能をもつ新たなフォトニックデバイスの実現可能性を探求します。非線形光学効果によりスクイズド光や相関光子対発生などの量子光学機能を実現でき、導波路構造を用いれば半導体レーザ励起で動作する高効率デバイスの実現が期待できます。集積半導体レーザは適当な設計により、単独でサブポアソン光発生などの機能を実現できる可能性があり、非線形デバイス励起光源としても利用できます。これらの機能は将来技術である量子情報処理・通信・計測のための重要な要素技術であり、ナノフォトニクスのための広波長域光源・極限性能光源としての応用も期待できます。 本グループの現行の研究を本テーマの観点から発展させるとともに、研究者交換による国際共同研究を積極的に行います。種々の具体的なデバイスについて理論解析、設計・作製技術の確立、デバイス試作と実験的検討により実現可能性を実証し、将来の量子情報通信における応用可能性を探索します。

 平成14年度は、量子光学機能の理論解析、および非線形光学デバイスと集積半導体レーザの基本構造の作製技術確立と改善に重点を置いて研究します。ニオブ酸リチウム結晶に周期的な位相整合構造と光波閉じ込めのための導波路構造を形成して非線形光学デバイスを試作し、スクイズド光(光子間隔が規則的で雑音が標準量子限界以下の光)や光子対(生成時刻が同時で相関をもった2光波)の発生特性を実験的に調べます。またインジウムガリウム砒素半導体結晶内に量子井戸構造と曲線状周期構造を形成して高性能半導体レーザを試作し、高周波域定電流駆動によりサブポアソン光(強度雑音が標準量子限界以下の光)発生の特性を測定し、可能性実証を行うことを目標とします。