強誘電体結晶ニオブ酸リチウム(LiNbO3:LN)は顕著な電気光学効果,音響光学効果,非線形光学効果を示す優れた光学結晶です。この結晶を用いた多くの光導波路デバイスがこれまで研究されてきました。本研究では、LN導波路レーザデバイスを研究しています。LN結晶にレーザ作用を付与するために、レーザ遷移を示す希土類元素をLNに添加します。レーザ作用を付与したLN結晶を用いることにより、これまでに無い新規機能をLN導波路デバイスにおいて実現できるので、本研究の成果がLN導波路デバイスの新たな応用分野開拓につながるものと期待しています。
 一例としてネオジウム(Nd)添加LN導波路レーザを図1に示します.Nd添加LN基板上の光導波路とその両端面の多層膜鏡がレーザ共振器を構成していて,Ndの吸収ピークである波長814nmの光で励起することで波長1084nmのレーザ光を得ます.作製には,まずNd薄膜をLN結晶上に堆積して1070℃,300時間の熱処理により結晶中へ拡散します.深さ6?m程のNd添加層が得られます.その後,溶融安息香酸中でLi+⇔H+のイオン交換を行って光導波路を形成,最後に多層膜鏡を端面に装加して完成します.共振器長は20~40mm程度です.レーザ発振特性を図2に示します.レーザ発振開始にともなう出力光パワーの急峻な立ちあがりが分かります.この場合の閾値パワーは2mWでした.高出力用に設計したデバイスでは最大で30 mWの出力パワーが得られています.
 添加する希土類元素はNdに限りません。光通信波長帯(波長1.5?m付近)で発光するエルビウム(Er)や、高いエネルギー変換効率が期待できるイッテルビウム(Yb)を添加した導波路レーザデバイスの検討も行っており、いずれにおいても連続レーザ発振が実現できています。
 単にレーザ光を得るだけでは、LN導波路レーザのメリットは出てきません。LNの優れた各種光学効果を組み合わせ,高機能レーザデバイスあるいはレーザ内蔵の高機能光導波路デバイスを実現したいと考えています.導波型電気光学変調器を集積化したQスイッチ導波路レーザや,非線形光学第2高調波発生素子を集積化して波長542nmの緑色光を発する導波路レーザを実現しています.
Nd熱拡散LN導波路レーザ

レーザ発振特性